冷酷な王さまは愛し方を知らない
走ったまま城内の方へ向かい、入口の方へと角を曲がったところで人とぶつかった。
走っていたせいもあり、なかなかの勢いでぶつかってしまい倒れこんでしまう。
そんな私の腕と腰を誰かの腕が抱え込み引き寄せた。
それは一瞬の出来事だったが、倒れることは免れたみたいだった。
「あ…、す、すみません!」
一瞬の出来事に呆然としてしまった私はハッとして身体を起こした。
そして目に映ったぶつかった人物に、目を見開く。
「クリスさん!?」
「…リズ。ああ…、見つかってしまったね」
「え、どういう…」
そこにいたのは紛れもなくクリスさん。
そうだ。
だって、舞踏会でもクリスさんらしき人を見た。
それに、あの王様を花屋に連れてきたのは他の誰でもなく、クリスさんだ。
「クリスさん!どういう事なんですか!?」
「あー、えと、落ち着いて、リズ。って、無理もないけど」
クリスさんは私の知っている人のいい笑顔で笑う。