冷酷な王さまは愛し方を知らない
「ありがとうございます」
王さまが部屋を出て行きしばらくして、その場に残っていたキースさんがそう言った。
なんのお礼だろうと首をかしげる。
「アルさまは、あまり眠れないお方なのです。忙しいのもありますが、いろいろと気を張っておりますので」
「そうなんですか…」
「ですから、先ほどもまさか本当にお眠りになられるとは…、私も驚いております。アルさま本人も驚いたようですけど」
あれは、驚いていたのか…。
わかりづらい反応。
「少しでも休むことができたのでしたらよかったです」
「はい。ありがとうございます、リズさま」
畏まって頭を下げられると困ってしまう。
そのリズさまって呼び方も本当はやめてほしいのだけど、他の候補者の方にもそうなのだから、決まり事なのだろう。
慣れないことは、なかなかむず痒いものだ。