冷酷な王さまは愛し方を知らない
私、そんなこと考える余裕もなかった。
用意されていたドレスの中の、一番シンプルで動きやすいものを選んだ。
私にはそれが十分着飾ったつもりではあったし、これ以上は馬子にも衣装みたいで着慣れない。
キラキラと輝くあの方たちの隣に、私は並べるだろうか。
やっぱり、場違いなのだとつくづく思う。
「王さまが戻られたぞ!!」
「わあああ!!」
歓声が上がる。
その歓声にハッと顔をあげると、開かれた城門の向こうに騎士たちの列が見え始めた。
その先頭に、太陽の光を受けキラキラと煌めく金色の髪。
「っ!アルさま…」
その彼の姿を目にすると、ホッと身体の力が抜けた。
無事に戻って来られたのだと。
しかし、次の瞬間血の気がさぁっと引いた。
着ている鎧についた赤い血。
アルさまの頬から流れる血。
その姿は、無事とは言い難いほどにボロボロだった。