冷酷な王さまは愛し方を知らない
王さまの孤独
その赤は、誰の赤だろうか……。
「アルさま!ご無事で!」
呆然とした私の隣から、キースさんがアルさまに駆け寄る。
アルさまは小さく頷きながらも声は出さず腰に差していた剣を突きつけるようにキースさんに渡した。
キースさんはホッとしたような顔でその剣を大事そうに受け取る。
「アルヴィン様!おかえりなさいませ!」
一番に声を張ったのは、ミリアさんだ。
その顔は、恐怖に怯えそうなのを必死に押し殺しているようで。
そういう面では王女であるシイナさまの方が上手だ。
「ご無事のご帰還お喜び申し上げます。ご立派ですわ」
凛とした表情のまま見惚れるようにそう言った。
ルナさんはただ頭を下げていた。
「…ああ」
アルさまは短くそう答えると、さほど興味もなさそうにその横を通り抜けていく。
毅然として歩かれているけれど、その背中はとてもお辛そうで。