冷酷な王さまは愛し方を知らない
救護室に行かなくてもいいのだろうか。
そんな疑問を抱きながらもアルさまの言うままに自室まで付き添った。
「あの、傷の手当を…」
「お前が気にする必要はない。医師をここに呼ぶ」
「そうですか…」
気にくらいする。
気づけば私が着ていたドレスのアルさまの身体に接していた側が赤く染まっている。
血がこれほど移るほど血が流れていて、それはまだ完全に止まっていないという事。
痛くないはずないのに、、アルさまは平然として見える。
「リズさま、ありがとうございます。あとは私にお任せください」
「キースさん…。はい。あの、お願いします」
私たちの後をついてきてくれていたキースさんが私からアルさまを引き受けた。
私は素直に体を離し頭を下げる。
これ以上、私がでしゃばるわけにはいかない。
私はただの庶民で、偶然選ばれたからここにいるだけだ。
「あの、失礼します」
「セシリアに頼んで、着替えを用意させてください。後、お風呂も」
「はい。大丈夫です」
私はもう一度頭を下げると逃げるように踵を返した。