冷酷な王さまは愛し方を知らない


キースさんに言われたとおり、セシリアにお風呂を用意してもらい腕についた血を洗い流す。
ドレスは洗ってまた着ると言ったけれど、セシリアに処分すると言われてしまった。

“王妃たるもの”という事なのだそう。
私は王妃になんてなるつもりはないのに。



お湯に流れ綺麗になった腕を見つめる。
その肌にはもちろん傷痕なんてない。

でも、アルさまの鎧の下にはどれほどの傷があったのだろう。
戦場は恐ろしいところだと、再確認した。



アルさまは、なぜあんなになってまで戦うのだろう。
傷だらけになって、誰の支えも借りず。
先陣を切って戦うその理由。


どれ程の傷を受け。
そしてどれ程の命を消して―――――。



「ッ」




想像して、こみ上げてきた嗚咽。
あの赤が、瞼を閉じてもこびりついているようで。



私はただ安全な場所にいたはずなのに。
ただただ怖くなった。




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