冷酷な王さまは愛し方を知らない


私の話…。
そう言われ、私は言葉に詰まる。
私の話とはいったい何のことだろう。



「お前はずっとあの花屋で働いていたのか」

「え…、あ、はい。10の頃から」

「そんな幼い頃から。なぜだ」



唐突に始まった身の上話。
ズバズバと鋭い刃のように飛んでくるアルさまの問い。



「アルさまも知っての通り、私の母は病を患っていて、その治療にいつでも貧しい日々でした。ですから、私は少しでも家計の足しになればと…」

「それでなぜ花屋なのだ」

「なぜ…?」

「稼ごうと思えば別の職もあったろう」

「それは、私が花が好きだったからです。花は人の心を豊かにしてくれます」



心が荒んだ時にも、花の色や匂いで少し救われることもある。
愛情を持って水を与えればその分花を咲かせて返してくれる。




「花など、儲かるのか?」

「儲かる…。儲かるかどうかと問われれば、そうですね…」



花は、生きる上で必ずしも必要なものではない。



< 75 / 413 >

この作品をシェア

pagetop