冷酷な王さまは愛し方を知らない
「どうした」
「いえ、あの…、すみません。どうしてでしょう…」
「俺が知るか」
アルさまは戸惑ったような怪訝な顔をして私を見る。
少し苛立っているのか、膝に置いた指を小刻みに上下していた。
私は慌てたように深呼吸をして涙を止めた。
「すみません。事実を突き付けられただけなのに、取り乱してしまって」
「事実?」
「いえ…、私が家族のためではなく自分のために働いていたという事です」
「は…?誰がそんなことを言った。俺は…」
「アルさま。お時間です。この後公務がありますので、すみませんがお急ぎください」
アルさまが何か言おうとしていたそれを遮るようにキースさんの声が重なる。
気づけば一時間が経ってしまっていた。
そんなにも話をしていたっけと思うくらいにあっという間だった。
「あの、私のせいで気分を害してしまい申し訳ありませんでした。以降はこんな事がないように気をつけますので」
「別に害してはいない。…では、失礼する」
アルさまは、何か言いたげだったけどそれ以上は何も言わずキースさんを連れて出て行ってしまった。