想うだけの…
ドアを開けると、幼稚園の制服を身にまとった笑顔のルナが目に飛び込んできた。

「ルナちゃん、お姉さんだね。かっこいいね」

智子は思わず涙目ぐんでルナを抱きしめた。

「まだ化粧してないの?早くして着替えておいでよ。もう7時半だよ」

次女のユナに朝ごはんを食べさせながら恭平が言った。

「もうメイクしたの!これはナチュラルメイクなの!着替えてくるね」

智子は2階へ上がり、この日の為に買ったベージュのスーツに着替えた。

少しラメの入ったツイード素材のジャケットと膝丈のタイトスカート。

嫁入り道具にと持たされた真珠のネックレスとピアスを付けて姿見に自分を写した。

「うん、さすが私」

智子は自分の仕上がりに大満足で階段を駆け下りると、玄関で恭平と子供たちが靴を履いていた。

「用意できた?少し早いけど出ようか。家の前で記念撮影しようよ」

久しぶりに綺麗に着飾った自分に何も言ってくれない恭平に少しガッカリしたが、今日の主役はルナなんだと自分に言い聞かせ、ハイヒールを履いて外に出た。
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