想うだけの…
玄関の表札をバックに、晴れ姿のルナの写真を何枚も撮りながら恭平が言った。

「家族でも撮りたいよね。脚立取ってきてくれない?」

「脚立?どこにあったっけ?て言うかもう8時15分だよ。時間なくない?帰ってからにしようよ」

そう話していると、後ろから女性の声がした。

「よかったら私がお撮りしましょうか?」

振り返ると、笑顔の女性がそこに立っていた。

智子と同じようなベージュのツイードのスーツを着た、黒くて長い髪の可愛らしい女性だった。

その少し後ろには、ルナと同じ幼稚園の制服を着た女の子と、スーツ姿で赤ちゃんを抱っこしている男性が立っていた。

「同じ幼稚園ですよね。はじめまして。青山と言います。写真、妻が撮りますよ」

男性は“時間がないんだから”と妻を促し、女性はカメラを持つ恭平に駆け寄った。
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