想うだけの…
智子は、ヤダヤダと泣き止まないルナを抱っこしながら受付の列に並んでいた。

「あれー!ルナちゃんどうしたの?」

振り返ると、ママ友の里美と娘のハナがいた。

「あーもう!里ちゃん!聞いてよ!」

智子は、ルナが泣いている理由と恭平の失態を愚痴った。

「それはパパさんやっちゃったねぇ。うちの旦那もそういう所あるわ。」

里美はアハハと笑った。

ルナは、ハナが付けているうさぎ組のバッジを指差してグスグスと泣いていた。

「でもさルナちゃん!こあら組さんも楽しそうだよ。先生がね、歌のお姉さんみたいに可愛いの。ほら見て!」

里美が指差す方向には、こあら組の受付をする可愛いらしい女性がいた。色が白くて目が大きく“美少女”という感じだ。まだ大学生と言っても十分通用するぐらい若い女性だった。

「あの先生ね、まだ3年目らしいんだけどけっこうしっかりした先生みたいだよ。」

「あの人が担任なんだ…」

「そうらしいよ。パパたちルンルンだろうね。あんな若くて可愛い子と接点持てる機会なんてなかなかないもんね。うさぎ組はベテランって感じの先生だったわ。」

うさぎ組じゃなくてこあら組になり、担任は若くて可愛い。仲の良いママ友とも離れてしまい、智子まで泣きたくなった。

「あ!順番きたみたいだよ!また後で一緒に写真撮ろうね!」

里美はハナを連れて2階のホールへと上がって行った。

智子は里美の“写真”という言葉にハッとした。

そういえば、あの写真を撮ってくれた女性の子供はどちらのクラスになったんだろう。

智子は嫌な予感しかしなかった。
< 8 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop