ラブの苦手

(愛子先輩が見ていない…。)
思わず絵美は、手具を落としてしまった。
その音でラブは、ハッとしてフロアを見ると呆然として立っている絵美と目が合った。
「青柳さん、何やってるの！こんな何でもない演技のところで手具を落とすなんて…。大会まで時間がないんだから、しっかりやってね。」
コーチの声が体育館に響いた。
「すっ、すいません…。」
絵美は手具を拾うと、フロアの外に出た。
朝練も終わり、ラブは部室で制服に着替え、部室を出るとまだレオタード姿の絵美が立っていた。
「絵美、早く着替えないとH・R始まっちゃうわよ。」
しかし絵美は、下を向いたままだった。
「さっきのことなら気にしない、気にしない。」
ラブは、絵美の肩に手を置いて元気付けた。
「愛子先輩！」
いきなり絵美が、ラブに抱きついてきた。
「えっ、絵美！」
ラブは、びっくりした。
「愛子先輩。私…私、先輩のことが好きなんです！」
「絵美、何言ってんのよ。さっ、さっきのことがショックで、気が動転しているのね。とにかく早く着替え…ね。」
そう言って絵美を離し、その場から駆けて行った。
(今のは、いったい何だったの？)
考えながら教室に向かっていると、後ろから声をかけられた。
「ラブ、おはよう。」