うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
「うん……十名ピックアップしたし、ひとりくらいは社長の目に留まる相手がいるわよね」

数日後。秘書課のオフィスでデスクワークをしながら独り言を呟いてしまう。

通常業務の合間に進めていた副社長の花嫁候補探し。私の独断で社長の理想に近い相手を見繕ったものの……。

あの息子大好きな社長が気に入る相手がいるといいんだけど。

封筒にしまっていると、珈琲の芳しい香りが鼻を掠めた。

「日葵先輩、お疲れ様です」

珈琲が入ったお気に入りのストライプ柄のマグカップを机に置いてくれたのは、昨年入社したばかりの新人後輩、堀内知世(ほりうち ともよ)だ。

二十三歳になる彼女は、アイドルのような可愛らしい見た目とは違い、性格は男前で負けず嫌い。

また専務の娘であることから、周囲に『コネ入社』と言われるのが嫌で仕事に奮闘している。

やる気と気合い充分で、覚えるのが速く優秀な秘書だと思う。

副社長の第三秘書を務めており、将来有望視されている彼女になぜか私は懐かれていた。

お盆を胸の前で抱え、ニコニコしながら私を見つめる堀内さん。
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