うぶ婚～一途な副社長からの溺愛がとまりません～

「あ、いつもどうもありがとう」

「当然です！　大好きな日葵先輩が飲む珈琲を淹れられて私は幸せですから!!」

力説する彼女に苦笑いしながらも飲む。

うん、今日もやっぱり堀内さんが淹れてくれた珈琲が美味しい。だからこそ伝えた。

「堀内さん、本当に珈琲を淹れるの上手ね」

「ありがとうございます！　日葵先輩に美味しい珈琲を飲んでほしくて頑張りました！」

褒められた犬が嬉しそうに尻尾を振るかの如く大喜びする堀内さんに、慣れたとはいえいまだに対応に困る。

そしてなにより周囲の視線が痛い。……なぜなら彼女がこうして珈琲を淹れてくれるのは私だけなのだから。

一番下の秘書が、先輩秘書に気遣うのは暗黙の了解で当然となっている秘書課。

私も後輩が配属されるまでは、なにかと先輩を立てて過ごしてきた。

けれど彼女の場合は違う。

元々の性格なのか、大手電化製品メーカーの専務を務める父親の娘としてなにかと注目されてきたからなのか、周囲の目を気にすることなく、思うがまま行動している。