うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
彼にあるのを心待ちにしているし、会えたら嬉しくて過ごす時間は楽しくて……私、副社長の話をしたら顔がだらしなくなる自信がある。

だからこそ社長になど話せるわけない。みっともない顔を見られたくないもの。それにふたりで過ごす時間のことは、誰にも話したくないヒミツにしたいから。

トクンと高鳴る胸を手で押さえ、小さく深呼吸をした後、歩を進めてオフィスへ戻った。



この日の夜、帰宅して遅番の母親に代わり夕食の準備をしていると、スマホが鳴った。

「誰だろう」

料理の手を休め、エプロンに入れていたスマホを手に取り確認すると、電話の相手はひとつしか歳の変わらない隼人からだった。

「隼人……? 珍しい、どうしたんだろう」

独り言を呟きながら電話に出ると、久しぶりに聞く元気な隼人の声が聞こえてきた。

『姉ちゃん? 久しぶり。今ちょっと大丈夫?』

「うん、もう家だから大丈夫だよ。なに? なにかあったの?」
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