うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
「じゃあなぜ廉二郎は急に見合いをしたいと言ったんだね? どうなんだ、井上くん!」

なにも言わない私に痺れを切らし、答えを急かしてきた社長に私は詰め寄った。

「ど、どうした……?」

驚き、たじろぐ社長に私はあるお願いをした。



「そろそろ……かな」

腕時計で時間を確認すると、二十時になろうとしていた。

今、私がひとりでいる場所は、社長行きつけの全室完全個室のすき焼きの老舗料亭。

慣れない場所に緊張しながら、ある人物の到着を待っていた。

少しすると、襖の向こうから声が掛けられた。

「失礼します、お連れ様がお見えになられました」

「あ、はい」

返事をすると、ゆっくりと開けられた襖。その先にいたのは社長と、私を見てびっくりしている副社長だった。

けれど副社長はすぐに社長を睨み、「騙しましたね」と言う。
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