うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
「副社長。私が先日、仕事終わりに食事を共にしていたのはひとつ下の弟ですから」

「え……弟?」

やっと彼は顔を上げて私を見たものの、拍子抜けしている。そんな彼に繰り返し伝えた。

「はい、弟です。就職を機にひとり暮らしを始め、会うのは久し振りでした」

「弟って……嘘だろ。俺はてっきり……」

口元を手で覆い、途方に暮れる副社長を見て、やっぱり誤解していたのかと思うと深いため息が漏れた。

「昨日から連絡が途絶えたのも、今夜家に来るなとおっしゃったのも、社長にお見合いをお願いしたのも、噂が原因ですか?」

「それは……」

言葉を詰まらせた副社長は、図星だと認めているようなもの。その姿にイラッときて、つい刺々しい言葉が出た。

「どうして噂をお耳にした時点で、私に確認してくださらなかったのですか?」

責めるように言うと、副社長は顔を伏せた。
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