うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
「まだいない……よね」

この日の夜、合鍵を使って久し振りに訪れた廉二郎さんのマンション。

極力彼の邪魔をしたくなくて、訪れることも、こちらから連絡を取ることも控えていた。

けれど今日のテレビで見た廉二郎さんは憔悴していて、心配でたまらなくなり、せめて彼の身の回りのことだけでもしたいと思い、訪れていた。

「お邪魔します」

真っ暗な室内に明かりを灯すと、部屋は少々荒れていた。きっと掃除する暇もなかったはず。

冷蔵庫の中を覗くと中は空。もしかしたらまともにご飯も食べていないのかもしれない。

「……よし!」

エプロンをつけて、まずは部屋の掃除に溜まっていた洗濯物に取りかかった。

そして次にキッチンへ立ち、保存できるおかずを作っていく。

疲れて帰ってきても、レンジで温めて食べられるように。

乾燥機で乾いた洗濯物を畳み、ワイシャツのアイロンをかけ、作り置きの料理をタッパーに入れて保存し終えた時、玄関のドアが開く音が聞こえてきた。

「あっ……」

キッチンからリビングに出ると、慌ただしくドアが開いた先には久しぶりに会う廉二郎さんがいた。
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