うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
「これからたくさんお父さんとお母さんには、親孝行したいので元気に長生きしてください。そしていつまでも仲良しでいてください。……私にとってふたりは理想の夫婦だから。……本当にありがとう。そしてこれからもよろしくお願いします」

最後までしっかり手紙を読み上げると、こらえていた涙が零れ落ちる。

けれど手紙と一緒に花束を渡すと、両親は私以上に泣いていて思わず笑ってしまった。

「……どういうことだ?」

両親に花束を渡し、「本当に今までありがとう」と再度感謝の気持ちを伝えると、隣から聞こえてきた声。

廉二郎さんを見ると、彼の手にはまだ社長に渡すはずの花束が握られていた。

「え、社長は?」

さっきまでいたはずなのに姿が見当たらない。

いつの間に消えた新郎の父親に、会場内からもどよめきが起きる。

「廉二郎さん、社長は?」

そっと尋ねると、彼も混乱している様子。

「わからない。日葵が手紙を読むまではいたはずだが……」

最後に新郎の父親から、感謝のスピーチが予定されている。それなのに社長はいったいどこへ行っちゃったの?

これでは披露宴を終えられない。どうしようかと途方に暮れていた時、会場の電気が消え、真っ暗になった。
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