うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
それにしても副社長、二週間前の『結婚しても構わない』発言をした人と同一人物とは思えないほど別人だ。

今のようにこの二週間で、何度か社内ですれ違うことがあった。けれど一度も目が合うことはなく、ただ素通りされるだけ。

「失礼します。こちら、社長から預かってきたものです」

「ごくろうさまです」

経理課の社員に封筒を預け、再び秘書課へと戻っていく。

副社長と結婚だなんてあり得ない話で、あの時は無我夢中で副社長も好きな相手と結婚なさってくださいって言っちゃったけれど……随分と生意気な物言いだったわよね?

時々、あの日の副社長とのやり取りをよく思い出しては彼のことばかり考えてしまっている。

よく知りもしない私と、社長が推す相手だからって理由で結婚してもいいって言ったのは、もしかしたら副社長も私と同じで誰かを好きになったことがないからかもしれないと。

だから結婚に対してもあんなにドライなのかもしれないと考えていた。
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