うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
「ではなぜ私の前では、照れたりなさったんですか?」

私だって会社の人間のひとりだ。ましてや秘書課に所属しているんだもの。重役と接する機会は度々あるのになぜ?

すると副社長は表情を崩し、私に素直な想いをぶつけてきた。

「キミには、本当の自分を知ってほしいからかもしれない。いつも通りを心がけていても、なぜか素直な感情が表に出てしまうようだ。……カッコ悪いとわかっていても」

「副社長……」

どこかバツが悪そうに口元に手を当てて話す姿を見て、今まで感じたことのない不思議な感情に支配される。

なんだろう、これ。今まで感じたことのない気持ちは。胸が苦しいっていうか、ふわふわするっていうか……。言葉では言い表すことができない。

それなのに副社長から視線を逸らすことができなかった。

「それほどキミのことは本気だ。……でなかったら、結婚してほしいだなんて言わない」

真剣な瞳に息を飲む。
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