うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
車が停車している場所は、自宅から目と鼻の先。なにも玄関先まで送ってもらうことはない。

慌てて私も車から降りた。

「副社長、ここで大丈夫ですから」

「いいから。……家の中に入るところを見て、安心させて帰らせてくれ」

車越しにふわりと笑う彼に先ほどとは違った胸の痛みを感じ、再び戸惑ってしまう。

どうして一々副社長の言動に胸が苦しくなるの?

「行こう」

「あっ、はい。……すみません」

先に歩き出した副社長についていくだけで精いっぱい。

私、どうしちゃったんだろう。相手は副社長だよ? 彼とは今後、関わり合うことはないと思っていたし、関わるべきではない。

私が勤める会社の次期社長で、一社員の私がこうしてふたりっきりで気軽に会える相手ではない。

そうだよ、さっきは雰囲気に流されてつい了承してしまったけれど、本来副社長は、私なんかが食事を共にしたり、休日を共に過ごせるような相手ではない。
< 63 / 330 >

この作品をシェア

pagetop