うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
やっぱり断るべきだよね。『さっきはつい了承してしまいましたが、やはりお断りさせていただきます』『私ではなくても、副社長と恋愛できるお相手は他にたくさんいるはずです』って。

家はもう目と鼻の先。彼の大きな背中に向かって声を掛けた。

「あの、副社長……!」

呼びかけに足を止めると、彼は振り返り私を見た。

「どうかした?」

首を傾げる副社長に思い切って伝えようとした時、聞き覚えのある声が耳に届いた。

「あれ……? ちょっとやだ、日葵!?」

驚いた声を上げたのは、私たちを見て喜んでいる仕事帰りのお母さんだった。

まさかこんなバッドタイミングで、お母さんと鉢合わせするとは夢にも思わず。微動だにできなくなる。

するとお母さんは素早く私たちの元へ駈け寄ってくると、私と副社長を交互に見てきた。

「日葵ったらなにやっているの? 送って下さったんでしょ? だったら上がってもらいなさい」

「……えっ! いや、でも……」

ギョッとし副社長を見ると、彼は突然現れたお母さんに、私以上に困惑している。
< 64 / 330 >

この作品をシェア

pagetop