God bless you!~第9話「その付属と、なんちゃって」・・・合同スポーツ大会
桂木が、俺と右川を強く疑っていたという事実はもちろん、右川の言う、1度も特別意識した事が無いとは……あっても困る話だが、そこまで決定的な否定はそぐわない気がする。
2度もああいう事があって、それでも全く意識しないと本当に言えるのか。
桂木の手前、何でもない事を強く装ったか……ここでは真意は分からない。
「しつこくてごめんね。もう1つだけ、訊いてもいいかな」
桂木が、恐らくアメを渡した。
「最近、黒川と仲良いみたいだけど。その可能性は……特にないの?」
今度は、俺が黒川を眺める番だった。
見ると、難しそうな顔で眉間にシワを寄せている。
これは想定外だろう。思いがけず、こっちは笑いが込み上げる。
「無いよ。無い無い。ありえない。このスニッカーズを賭けてもいい」
またしばらく不自然な沈黙が続いた。
ややあって、「あのさーミノリ」と、右川が口を割る。
「いつも思うんだけど、何で沢村や黒川と……あたし言われちゃうの?」
その声は、怒っているとも違った。
本気で訳分からないという意味に伝わる。
「確かに、振ったの振られたの、噂は色々やらかしたけど、あたしと沢村はどう見たってハマってないよ?仲悪い事くらい見てて分かるよね?1番近くに居るミノリまで何でそんな事言うの?そこが不思議だよ。沢村なんて生徒会室でしか喋ってなくて。それも意味のない言い合いばっかり。黒川だって席が近いっていうだけ。休憩時間に、ちょこっと話す程度だよ。やっぱり何の意味もない、くだらない事ばっか」
「……」
「同じクラスの海川。2組のスーさん。6組の清野くん。あたし散々喋ってるんだけど」
知ってた?と右川が畳み掛ける。
「海川なんて、沢村や黒川どころじゃないよ。いつも仲良く、あれやこれや。沢村とか黒川とか言う前に、そこをどうしてイジってくれないの?って、思っちゃうんだけど」
同じクラスの海川。どっちかというと大人しいヤツで、俺等とはあんまり接点が無い。スーさん、清野あたりは、ぼんやりと浮かんだ。
確かに、俺は右川とまともな話をした事が無い。単なるアクシデント。あるいはケンカだけ。俺と右川をもてはやす周囲の中に、今も噂をマジで捉えるヤツらもいるのかと、その可能性を推し測る。
桂木は、右川の問い掛けに答えが出せなかった。
ちょうど桂木のスマホに着信が知らされて、2人の会話は中断する。
そこから2人の話題は受験に移った。
「右川って卒業したら就職って聞いたけど、大学はどこも受けないの?」
「そだね」
「その、お兄さんとはどうなるの?」
「就職してから始まるって感じかな。社会人で同等だし」
「社会人か。そっかぁ」
桂木は、大きなため息をついた。
「あたしは、卒業したら沢村とはそれっきりかな」
「なんで?」
「あたし、大学は京都に行きたくて準備してるし」
「んーあたし的には、それが信じらんないけどね」
「なんで?」
「あいつがどこのガッコ行くか知らないけど、あたしがミノリなら、絶対追いかける」
それはあまりにも迷惑に等しい行為だと思った。だが、そこまで強く思える相手が居るという事に、わずかながら羨ましさも感じる。
思いを巡らせていると、黒川がひょいと窓から顔を出した。
「チキン野郎が聞いてるぞぉぉぉ~」
な!?
やっぱりそう来るか!
嫌な予感も、わずかにあった。油断した。逃げる隙が無かった。
立てよ、と黒川に引っ張り上げられて、俺は、強引に窓辺に立たされる。
桂木の泣きそうな顔が、1番最初に目に飛び込んだ。
「あ、いや、違くて……」
「最低!最悪!ふざけんな!あっち行け!吉森のエサになれ!」
右川は、あらん限りの罵声を浴びせ、そこらへんの絵の具を投げつける。
最後に画用紙が飛んできて、ひと通りの八つ当たりが終わったらしく、やっぱりここで、一言謝っとくべきかと、「てゆうか、あの……」と、言い掛けた所を黒川が遮った。
「てゆうか、そんなとこで話してる方もどうなんだよ。俺らで良かったんじゃないの」
謝るどころの話じゃなくなった。
この場合、黒川はともかく、俺でよかったかどうかはまた別の話だ。
「今聞いた事。他の人に言ったら、100回殺すよっ!」
「そんな、つまんねー事言うかよ。誰も笑わねーよ」
黒川と右川、納得できたらしい2人。
俺と桂木は闇の中に沈んだまま。お互いの顔が、もう見れない。
始業のチャイムが鳴った。
黒川はさっさと出て行った。
右川は、また画材を広げ、音楽を聞き始める。
桂木と俺は、1度も言葉を交わさないまま、それぞれの場所に散った。
2度もああいう事があって、それでも全く意識しないと本当に言えるのか。
桂木の手前、何でもない事を強く装ったか……ここでは真意は分からない。
「しつこくてごめんね。もう1つだけ、訊いてもいいかな」
桂木が、恐らくアメを渡した。
「最近、黒川と仲良いみたいだけど。その可能性は……特にないの?」
今度は、俺が黒川を眺める番だった。
見ると、難しそうな顔で眉間にシワを寄せている。
これは想定外だろう。思いがけず、こっちは笑いが込み上げる。
「無いよ。無い無い。ありえない。このスニッカーズを賭けてもいい」
またしばらく不自然な沈黙が続いた。
ややあって、「あのさーミノリ」と、右川が口を割る。
「いつも思うんだけど、何で沢村や黒川と……あたし言われちゃうの?」
その声は、怒っているとも違った。
本気で訳分からないという意味に伝わる。
「確かに、振ったの振られたの、噂は色々やらかしたけど、あたしと沢村はどう見たってハマってないよ?仲悪い事くらい見てて分かるよね?1番近くに居るミノリまで何でそんな事言うの?そこが不思議だよ。沢村なんて生徒会室でしか喋ってなくて。それも意味のない言い合いばっかり。黒川だって席が近いっていうだけ。休憩時間に、ちょこっと話す程度だよ。やっぱり何の意味もない、くだらない事ばっか」
「……」
「同じクラスの海川。2組のスーさん。6組の清野くん。あたし散々喋ってるんだけど」
知ってた?と右川が畳み掛ける。
「海川なんて、沢村や黒川どころじゃないよ。いつも仲良く、あれやこれや。沢村とか黒川とか言う前に、そこをどうしてイジってくれないの?って、思っちゃうんだけど」
同じクラスの海川。どっちかというと大人しいヤツで、俺等とはあんまり接点が無い。スーさん、清野あたりは、ぼんやりと浮かんだ。
確かに、俺は右川とまともな話をした事が無い。単なるアクシデント。あるいはケンカだけ。俺と右川をもてはやす周囲の中に、今も噂をマジで捉えるヤツらもいるのかと、その可能性を推し測る。
桂木は、右川の問い掛けに答えが出せなかった。
ちょうど桂木のスマホに着信が知らされて、2人の会話は中断する。
そこから2人の話題は受験に移った。
「右川って卒業したら就職って聞いたけど、大学はどこも受けないの?」
「そだね」
「その、お兄さんとはどうなるの?」
「就職してから始まるって感じかな。社会人で同等だし」
「社会人か。そっかぁ」
桂木は、大きなため息をついた。
「あたしは、卒業したら沢村とはそれっきりかな」
「なんで?」
「あたし、大学は京都に行きたくて準備してるし」
「んーあたし的には、それが信じらんないけどね」
「なんで?」
「あいつがどこのガッコ行くか知らないけど、あたしがミノリなら、絶対追いかける」
それはあまりにも迷惑に等しい行為だと思った。だが、そこまで強く思える相手が居るという事に、わずかながら羨ましさも感じる。
思いを巡らせていると、黒川がひょいと窓から顔を出した。
「チキン野郎が聞いてるぞぉぉぉ~」
な!?
やっぱりそう来るか!
嫌な予感も、わずかにあった。油断した。逃げる隙が無かった。
立てよ、と黒川に引っ張り上げられて、俺は、強引に窓辺に立たされる。
桂木の泣きそうな顔が、1番最初に目に飛び込んだ。
「あ、いや、違くて……」
「最低!最悪!ふざけんな!あっち行け!吉森のエサになれ!」
右川は、あらん限りの罵声を浴びせ、そこらへんの絵の具を投げつける。
最後に画用紙が飛んできて、ひと通りの八つ当たりが終わったらしく、やっぱりここで、一言謝っとくべきかと、「てゆうか、あの……」と、言い掛けた所を黒川が遮った。
「てゆうか、そんなとこで話してる方もどうなんだよ。俺らで良かったんじゃないの」
謝るどころの話じゃなくなった。
この場合、黒川はともかく、俺でよかったかどうかはまた別の話だ。
「今聞いた事。他の人に言ったら、100回殺すよっ!」
「そんな、つまんねー事言うかよ。誰も笑わねーよ」
黒川と右川、納得できたらしい2人。
俺と桂木は闇の中に沈んだまま。お互いの顔が、もう見れない。
始業のチャイムが鳴った。
黒川はさっさと出て行った。
右川は、また画材を広げ、音楽を聞き始める。
桂木と俺は、1度も言葉を交わさないまま、それぞれの場所に散った。