God bless you!~第9話「その付属と、なんちゃって」・・・合同スポーツ大会
これからも淡々と、そのうえ堂々と
「病弱なお嬢様が貧血で倒れて……っていう設定なんです。リアルでした?あたし女優になれるかもしれないと思いました」
今日も、相変わらず鏡を覗いている。
そんな浅枝に、赤野のえげつない言葉は言わないでおいた。あれが、お嬢様だとは気が付かなかった。貧血も。女優は、はっきり無理だと思う。
浅枝は夢見心地に、何度も鏡を覗いた。
報告書。会計報告。もう何でもいいから何かやれ。
「ていうか、石原にマジでチクるぞ」と、マジで脅した。
「僕、本当はこびと先輩と一緒に走りたかったです」と真木が悔しがる。
「おまえはその前に、基本的体力を見に着けろ」と忠告しておく。
それぞれ試合のスコアを集めて、桂木は一覧に打ち込んでいた。
そして、いつも以上に明るさを取り戻している。
「あの北島くん、1年生なんだって」
桂木の連れ。
「来年は留学するとか言ってた。いいなー」
「何処へ?」
「ニュージーランド」
「キウイか」
がばっ!
うたた寝していた右川が起き上がると、そこら中の雑貨が音を立てて床に散らばった。
「クソつまんねー声で目が覚めた。頭が腐る。内臓が、ぶしゃーっ!」
そう言えば、居た。忘れてた。
「合コンしませんか、って誘われちゃった」と桂木は流し目で訴える。
どう驚いていいのか、正直迷った。
よかったじゃないか、とも言えないし。
「合コン、いいじゃん。北島くんに換えたら?45なんか止めて」
「だったら右川も、お兄さん辞めて、ブラザーKにする?」
「だーかーらー、そういうの止めて。黒川はゲロ」
「45は、ヘタレか」
「そそ」
確か、桂木は彼女という立場じゃなかったか。
本人の居る前で、耳を疑うスラングとやり取りが、そこにある。
真木も阿木も浅枝も、下を向いてはいるが、笑いを隠しもしない。
「ていうか、おまえら。それイジメだろ」
巷で話題の、集団パワハラだろ。
女子がおるだけいいやんけ……口が裂けても俺は言えそうにない。
真木が部活に出掛け、阿木と浅枝はお金の事で先生に呼ばれているとかで、向かった。
結果、双浜生徒会・泥沼恋愛2股メンバーだけが取り残される。
「沢村、もう帰ろうよ。今日これからどっか行かない?」
桂木は、まるで誰にでも言うように、つるんと言った。
「これからバレー部のミーティングだよ」
「えー、ざーんねーん」
そして、吹っ切れたように荷物を抱えて、ドアの前に立つ。
「あのさ」と改まったと思ったら、
「あたし、今でも沢村が大好きだよ。だから、今日からまたよろしくね」
俺はあんまり驚いて、パソコン上、変な文字を立て続けに打ち込んだ。
右川も椅子をズルズルと滑って、背中から崩れ落ちる。
桂木の言葉とも思えない。
右川も居るというのに……そんな他人の目の前で大交際宣言とは。
何を言えばいいのか。思うように声が出ない。
右川は、咄嗟に雑誌で顔を隠した。
見ない振り、聞こえない振りを装って、この成り行きを見物しているな。
ていうか、
「そういう事言うの、恥ずかしいから辞めろよ」
結果、思ったままが、つるんと出た。
桂木のあまりの超自然態度に、こっちが気を使って言葉を選ぶという思いやりがスッ飛ぶ。
「ミーティングって、本当?」
「本当だよ」
「あ、そ。とりあえず、それは信じてあげる。じゃ、またね」
満足そうに笑って、ドアの向こうに消えた。
「……本当だし」
今まで、苦し紛れに言い繕っていた事がバレバレ。それは確実になった。
ここにきて桂木は……まるで、あの時の松倉妹を彷彿とさせる片思い宣言をブチ上げるとは。
そこからまた始めるのか。男のケジメを寄せ付けず、そうやって、これからも淡々と、そのうえ堂々と……続くのか。
これは誰かに唆されたのか。
まさか、おまえの入れ知恵なのかと、俺は疑いの目を向ける。
右川は、自分が獲得した商品券を眺めて、「ゾクゾクしてるぅ~♪ワクワクしてるぅぅぅ~♪」と鼻歌を歌う。
「あんま好い気になってんじゃねーぞ」
「それ、そっくりお返し致しますぅ~♪助けてやったとか、後始末もしてやったとか、自己犠牲のヒーロー気取りも大概にしてぇ~。お腹一杯。ゲロ」
そこまで言うか。
「味方を欺いて笑ってんじゃねーよ。おまえさ、ちょっとは悪かったなとか思わない?」
「思うよ。思うさ。すっげー後悔してる。あん時、45をブチ込んで逃げればよかった。そしたらプレステのソフトが手に入ったのにぃぃぃぃ~」
……訊いた俺が悪かった。
不意に、外から永田の声が聞こえる。
「夏に向けて気持ちを切り替えろッ!」とか言ってる。
吹奏楽らしい優雅な音色も流れてきた。
こっちは、初夏を思わせる涼しげな旋律である。
そのメロディーに乗せて、
「いいな♪あたしもー1度でいいから、大好きとか言われたいな♪」
右川は虚ろに空を見つめた。
音が止むと同時に、「じゃ、帰るね」と、右川は立ち上がる。
これは初めてかもしれない。
「じゃあな」
今日は気持ち良く、帰してやるよ。
<Fin>
.:*゚..:。:. ☆o。.:*゚:.。:. ゚・*:.。..。.:*・゚ o☆.:*゚..:。:. ゚・*:.。..。.:*・゚.:*゚
第10話 予告。
.:*゚..:。:. ☆o。.:*゚:.。:. ゚・*:.。..。.:*・゚ o☆.:*゚..:。:. ゚・*:.。..。.:*・゚.:*゚
らす♪
もうすぐ夏休み。
三者面談。
失恋と受験。
1ヶ月限定の彼氏。
兄貴と親父が出ます。
〝よしこ〟も出ます。
お楽しみに♪
今日も、相変わらず鏡を覗いている。
そんな浅枝に、赤野のえげつない言葉は言わないでおいた。あれが、お嬢様だとは気が付かなかった。貧血も。女優は、はっきり無理だと思う。
浅枝は夢見心地に、何度も鏡を覗いた。
報告書。会計報告。もう何でもいいから何かやれ。
「ていうか、石原にマジでチクるぞ」と、マジで脅した。
「僕、本当はこびと先輩と一緒に走りたかったです」と真木が悔しがる。
「おまえはその前に、基本的体力を見に着けろ」と忠告しておく。
それぞれ試合のスコアを集めて、桂木は一覧に打ち込んでいた。
そして、いつも以上に明るさを取り戻している。
「あの北島くん、1年生なんだって」
桂木の連れ。
「来年は留学するとか言ってた。いいなー」
「何処へ?」
「ニュージーランド」
「キウイか」
がばっ!
うたた寝していた右川が起き上がると、そこら中の雑貨が音を立てて床に散らばった。
「クソつまんねー声で目が覚めた。頭が腐る。内臓が、ぶしゃーっ!」
そう言えば、居た。忘れてた。
「合コンしませんか、って誘われちゃった」と桂木は流し目で訴える。
どう驚いていいのか、正直迷った。
よかったじゃないか、とも言えないし。
「合コン、いいじゃん。北島くんに換えたら?45なんか止めて」
「だったら右川も、お兄さん辞めて、ブラザーKにする?」
「だーかーらー、そういうの止めて。黒川はゲロ」
「45は、ヘタレか」
「そそ」
確か、桂木は彼女という立場じゃなかったか。
本人の居る前で、耳を疑うスラングとやり取りが、そこにある。
真木も阿木も浅枝も、下を向いてはいるが、笑いを隠しもしない。
「ていうか、おまえら。それイジメだろ」
巷で話題の、集団パワハラだろ。
女子がおるだけいいやんけ……口が裂けても俺は言えそうにない。
真木が部活に出掛け、阿木と浅枝はお金の事で先生に呼ばれているとかで、向かった。
結果、双浜生徒会・泥沼恋愛2股メンバーだけが取り残される。
「沢村、もう帰ろうよ。今日これからどっか行かない?」
桂木は、まるで誰にでも言うように、つるんと言った。
「これからバレー部のミーティングだよ」
「えー、ざーんねーん」
そして、吹っ切れたように荷物を抱えて、ドアの前に立つ。
「あのさ」と改まったと思ったら、
「あたし、今でも沢村が大好きだよ。だから、今日からまたよろしくね」
俺はあんまり驚いて、パソコン上、変な文字を立て続けに打ち込んだ。
右川も椅子をズルズルと滑って、背中から崩れ落ちる。
桂木の言葉とも思えない。
右川も居るというのに……そんな他人の目の前で大交際宣言とは。
何を言えばいいのか。思うように声が出ない。
右川は、咄嗟に雑誌で顔を隠した。
見ない振り、聞こえない振りを装って、この成り行きを見物しているな。
ていうか、
「そういう事言うの、恥ずかしいから辞めろよ」
結果、思ったままが、つるんと出た。
桂木のあまりの超自然態度に、こっちが気を使って言葉を選ぶという思いやりがスッ飛ぶ。
「ミーティングって、本当?」
「本当だよ」
「あ、そ。とりあえず、それは信じてあげる。じゃ、またね」
満足そうに笑って、ドアの向こうに消えた。
「……本当だし」
今まで、苦し紛れに言い繕っていた事がバレバレ。それは確実になった。
ここにきて桂木は……まるで、あの時の松倉妹を彷彿とさせる片思い宣言をブチ上げるとは。
そこからまた始めるのか。男のケジメを寄せ付けず、そうやって、これからも淡々と、そのうえ堂々と……続くのか。
これは誰かに唆されたのか。
まさか、おまえの入れ知恵なのかと、俺は疑いの目を向ける。
右川は、自分が獲得した商品券を眺めて、「ゾクゾクしてるぅ~♪ワクワクしてるぅぅぅ~♪」と鼻歌を歌う。
「あんま好い気になってんじゃねーぞ」
「それ、そっくりお返し致しますぅ~♪助けてやったとか、後始末もしてやったとか、自己犠牲のヒーロー気取りも大概にしてぇ~。お腹一杯。ゲロ」
そこまで言うか。
「味方を欺いて笑ってんじゃねーよ。おまえさ、ちょっとは悪かったなとか思わない?」
「思うよ。思うさ。すっげー後悔してる。あん時、45をブチ込んで逃げればよかった。そしたらプレステのソフトが手に入ったのにぃぃぃぃ~」
……訊いた俺が悪かった。
不意に、外から永田の声が聞こえる。
「夏に向けて気持ちを切り替えろッ!」とか言ってる。
吹奏楽らしい優雅な音色も流れてきた。
こっちは、初夏を思わせる涼しげな旋律である。
そのメロディーに乗せて、
「いいな♪あたしもー1度でいいから、大好きとか言われたいな♪」
右川は虚ろに空を見つめた。
音が止むと同時に、「じゃ、帰るね」と、右川は立ち上がる。
これは初めてかもしれない。
「じゃあな」
今日は気持ち良く、帰してやるよ。
<Fin>
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第10話 予告。
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らす♪
もうすぐ夏休み。
三者面談。
失恋と受験。
1ヶ月限定の彼氏。
兄貴と親父が出ます。
〝よしこ〟も出ます。
お楽しみに♪