God bless you!~第9話「その付属と、なんちゃって」・・・合同スポーツ大会
はいはい、ちゃんと取り掛かってますってば
他校、それも男子高との合同大会と聞いて、まず女子が一斉に粟立った。
「パねぇ!気絶っ!」
「ヤバい。どうしよう!?」
「あたし痩せなきゃ!」
寄ると触ると、その話題で持ちきりだ。
自動的に、男子も無視できなくなる。
〝ちょっと頭良いからって、いい気になってんじゃねーよ〟
〝ちょっとモテるからって、いい気になってんじゃねーよ〟
〝ちょっと金あるからって、いい気になってんじゃねーよ〟
寄ると触ると、ライバルを蹴落とす牽制に余念が無い。
3年5組。
数学で新しい単元に入ったとき、吉森先生は必ず宿題を出す。
最後に配られたプリントが行き渡るより早く、周囲は立ち上がる。
荷物をまとめながらスマホをチェック。
「最後の問題、平行移動はグラフも書くように!」と、先生の声は教室内の雑音と喧噪に吸い込まれ、そして誰も居なくなった。
合同大会決定の大騒ぎを一通りヤリ過ごした辺りで、目が覚めるというか、冷静になるというか、ここにきて具体的な実務(面倒事)が鎌首をもたげる。
そして、そこが気になるのは、生徒会執行部だけでもない。
「で、何すんだ?とりあえず俺らどうすんの」
黒川が半ばイライラしながら右川に突っ込んだ。
「何かごちゃごちゃ。色々やるみたい」と、右川はいい加減に応えて黒川のイライラを逆撫で、さっそく帰り支度を始める。
「チビッ!色々って何だよッ」
廊下から顔を覗かせたのは、バスケ部の永田だった。
「なーんか、バスケとかバレーとか」
じゃ、帰るね♪と、引き止める隙を与えず、逃げ出した。
右川のいい加減な説明に、永田が食い付いて、
「バスケもあんのかッ!詳しく話せッ!それじゃわかんねー!議長ッ!」
なんでいつもそんなに元気なのか。そのパワーが純粋に羨ましくもある。
今の所は、「そのうち貼り出すから。掲示板見ろ」と言うしかない。
俺自身が、まだ何も手を付けていない。
永田に毒づく余裕も無いほど、急に忙しくなる。阿木と相談して、分かる範囲で作業を分担して……それでも恐ろしいほどの準備が必要だ。
出場する人数。学年別。クラス別。
選手だけではない。
マネージャーみたいな世話係とか、審判や集計係も必要なのか?
やって来た付属生徒を放置する訳にもいかないから、控え室みたいな?
そんなことを頭でグルグル考えていると、今この時点で一体どれから手をつければいいのかと、軽く混乱してくる。
とりあえず概要・種目を掲げて出場選手やお手伝い・有志を募集すると言うことで、この放課後、さっそく掲示板に要綱を貼り出した。
そのついでに体育館に立ち寄って、部活の練習を始めるヤツらを横目に、どうしたもんだろうかと考えを巡らせる。キャプテン、部長、マネージャー、運動系ネットワークを駆使して、この修羅場を乗り切るとしか。
絶えず、何かが抜け落ちているんじゃないかと不安が襲う。
今日は月曜日。体育館は、ほぼバレー部が独占。
半分が女子バレー。半分が男子バレー。
2面をフル使用で生き生きと転げまわるメンバーを眺めつつ、たまには暴れたいなーと物欲しそうにしていると、そこへキャプテンの工藤がやってきた。
「うりゃ、議長くん」
「うるせー。2度とそれを呼ぶな」
この次は無いと思え。
怖ぇ~と吹いて、一瞬で顔色を変え、工藤は「あのさ。あれ」と指さす。
バレーコートのライン外。
「付属戦ッ!オレは双浜バスケ部として優勝を目指すッ!いいか、おまえら!これはプライドの問題だぁッ!」
永田の声が轟いた。
バレー部が体育館を独占する日は、コート場外を他の部活に開放している。
たまにやってくる速攻アタックの隕石を避けながら、体操部が柔軟体操をしていたり、卓球部が素振りをしていたりするのだ。
ゴール付近はバスケ部に開放しているので仕方ないとは言え、永田の罵声が聞きたくもないのに聞こえてくると、工藤は文句を言いたいのだろう。
そう言いたい気持ちも分かる。デカい声ぐらいで?と思われがちだが、これは卵が先かニワトリが先か、の問題なのだ。
ゴール下に並ぶバスケ部の面々に向けてサーブやスパイクが容赦なく打ち込まれると、
「悔しかったら撥ねかえせッ!今期予選で敗退確実の弱小バレー部にモチベーションまで奪われんなッ!」と、決まって永田が大声で嫌味を言う。
そうくるならこっちだって!とばかりに、打ち込むスパイクに益々力が入ると言った具合で、どんどんエスカレートしてくるのだ。
永田があんまり酷い物言いなので、「おまえらにはもう使わせない。外でやれよ」と、言うと「横暴だッ!」と来る。どっちがだ。
そう言う時、決まって生徒会の俺が調停に呼び出されるわけだが、当然、簡単には収まらない。
「議長がゴチャゴチャ言ってんじゃねーよッ!いちいち出張ってくんなッ!呼んでねーワ!女子の前だからって恰好つけてんじゃねーよッ!おまえが桂木と悶えよーが、もつれよーが、それでオレらが何でも従うと思うなッ!何だよッ、何だよッ、やんのかぁ、ゴラぁッ!」
「うるせぇよ!ゴチャゴチャ言うな。黙ってろ」
思わず体育館のド真ん中で叫んだら、「うわぁッ!脅されたぁッ!」
「パねぇ!気絶っ!」
「ヤバい。どうしよう!?」
「あたし痩せなきゃ!」
寄ると触ると、その話題で持ちきりだ。
自動的に、男子も無視できなくなる。
〝ちょっと頭良いからって、いい気になってんじゃねーよ〟
〝ちょっとモテるからって、いい気になってんじゃねーよ〟
〝ちょっと金あるからって、いい気になってんじゃねーよ〟
寄ると触ると、ライバルを蹴落とす牽制に余念が無い。
3年5組。
数学で新しい単元に入ったとき、吉森先生は必ず宿題を出す。
最後に配られたプリントが行き渡るより早く、周囲は立ち上がる。
荷物をまとめながらスマホをチェック。
「最後の問題、平行移動はグラフも書くように!」と、先生の声は教室内の雑音と喧噪に吸い込まれ、そして誰も居なくなった。
合同大会決定の大騒ぎを一通りヤリ過ごした辺りで、目が覚めるというか、冷静になるというか、ここにきて具体的な実務(面倒事)が鎌首をもたげる。
そして、そこが気になるのは、生徒会執行部だけでもない。
「で、何すんだ?とりあえず俺らどうすんの」
黒川が半ばイライラしながら右川に突っ込んだ。
「何かごちゃごちゃ。色々やるみたい」と、右川はいい加減に応えて黒川のイライラを逆撫で、さっそく帰り支度を始める。
「チビッ!色々って何だよッ」
廊下から顔を覗かせたのは、バスケ部の永田だった。
「なーんか、バスケとかバレーとか」
じゃ、帰るね♪と、引き止める隙を与えず、逃げ出した。
右川のいい加減な説明に、永田が食い付いて、
「バスケもあんのかッ!詳しく話せッ!それじゃわかんねー!議長ッ!」
なんでいつもそんなに元気なのか。そのパワーが純粋に羨ましくもある。
今の所は、「そのうち貼り出すから。掲示板見ろ」と言うしかない。
俺自身が、まだ何も手を付けていない。
永田に毒づく余裕も無いほど、急に忙しくなる。阿木と相談して、分かる範囲で作業を分担して……それでも恐ろしいほどの準備が必要だ。
出場する人数。学年別。クラス別。
選手だけではない。
マネージャーみたいな世話係とか、審判や集計係も必要なのか?
やって来た付属生徒を放置する訳にもいかないから、控え室みたいな?
そんなことを頭でグルグル考えていると、今この時点で一体どれから手をつければいいのかと、軽く混乱してくる。
とりあえず概要・種目を掲げて出場選手やお手伝い・有志を募集すると言うことで、この放課後、さっそく掲示板に要綱を貼り出した。
そのついでに体育館に立ち寄って、部活の練習を始めるヤツらを横目に、どうしたもんだろうかと考えを巡らせる。キャプテン、部長、マネージャー、運動系ネットワークを駆使して、この修羅場を乗り切るとしか。
絶えず、何かが抜け落ちているんじゃないかと不安が襲う。
今日は月曜日。体育館は、ほぼバレー部が独占。
半分が女子バレー。半分が男子バレー。
2面をフル使用で生き生きと転げまわるメンバーを眺めつつ、たまには暴れたいなーと物欲しそうにしていると、そこへキャプテンの工藤がやってきた。
「うりゃ、議長くん」
「うるせー。2度とそれを呼ぶな」
この次は無いと思え。
怖ぇ~と吹いて、一瞬で顔色を変え、工藤は「あのさ。あれ」と指さす。
バレーコートのライン外。
「付属戦ッ!オレは双浜バスケ部として優勝を目指すッ!いいか、おまえら!これはプライドの問題だぁッ!」
永田の声が轟いた。
バレー部が体育館を独占する日は、コート場外を他の部活に開放している。
たまにやってくる速攻アタックの隕石を避けながら、体操部が柔軟体操をしていたり、卓球部が素振りをしていたりするのだ。
ゴール付近はバスケ部に開放しているので仕方ないとは言え、永田の罵声が聞きたくもないのに聞こえてくると、工藤は文句を言いたいのだろう。
そう言いたい気持ちも分かる。デカい声ぐらいで?と思われがちだが、これは卵が先かニワトリが先か、の問題なのだ。
ゴール下に並ぶバスケ部の面々に向けてサーブやスパイクが容赦なく打ち込まれると、
「悔しかったら撥ねかえせッ!今期予選で敗退確実の弱小バレー部にモチベーションまで奪われんなッ!」と、決まって永田が大声で嫌味を言う。
そうくるならこっちだって!とばかりに、打ち込むスパイクに益々力が入ると言った具合で、どんどんエスカレートしてくるのだ。
永田があんまり酷い物言いなので、「おまえらにはもう使わせない。外でやれよ」と、言うと「横暴だッ!」と来る。どっちがだ。
そう言う時、決まって生徒会の俺が調停に呼び出されるわけだが、当然、簡単には収まらない。
「議長がゴチャゴチャ言ってんじゃねーよッ!いちいち出張ってくんなッ!呼んでねーワ!女子の前だからって恰好つけてんじゃねーよッ!おまえが桂木と悶えよーが、もつれよーが、それでオレらが何でも従うと思うなッ!何だよッ、何だよッ、やんのかぁ、ゴラぁッ!」
「うるせぇよ!ゴチャゴチャ言うな。黙ってろ」
思わず体育館のド真ん中で叫んだら、「うわぁッ!脅されたぁッ!」