僕はキミの心臓になりたい
プロローグ
15歳になったばかりの中学3年の夏。
羽賀瑞稀(はがみずき)は、東京のとある大学病院に入院していた。
8月がもうじき終わろうとし
窓の外からひぐらしの音が聞こえてくる。
ひぐらしの音は、なぜこんなに気持ちを切なくさせるのだろう。
目眩がひどく続いた矢先に倒れ
入院してからおよそ1ヵ月。
点滴や薬の投与といった辛い治療に耐えながら、毎日ベッドに横になり
窓の景色を眺めていた。
外の景色は何一つ変わろうとしないのに
俺の病魔は驚く速さで進行していた。
この世界はみんな平等の時間を過ごしてるはずなのに
なぜこんなにもスピードが違うのだろうか。
今日、主治医からおふくろと一緒に
この前受けた検査の結果を伝えられることになっている。
緊張しながら待っていても仕方ない。
主治医から呼ばれるまで、一眠りしようと目を閉じた。
ひぐらしの音が、心地よい眠りの世界へ連れ出してくれた。
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