僕はキミの心臓になりたい
改札を抜けると
目の前には魅力的なお店がたくさんあって
とても賑やかな光景が広がった。
「行きたいとこいろいろピックアップしてきたけど、でもまずは昼メシだな!」
そういえばもうお昼か。
どうりでお腹が空くわけだ。
「鎌倉来たら、やっぱ和食がいーと思ったんだけどいい?」
「任せるよ!」
羽賀くんの提案に異論はなく
私はいつもより足早に歩く彼に着いていった。
事前に下調べしていたようで
駅から歩いてすぐ着いた場所は古民家風のお蕎麦やさん。
「すごいね〜日本の和って感じ」
「だろ!こういう古い作りの店好きなんだよな」
鎌倉っぽさが出る古風な外観で
隠れ屋的な小さいお店だった。
木でできたテーブルに案内され
メニューを見始めると羽賀くんは無言タイムを始めた。
一通りメニューをパラパラ見て
最後まで目を通すと再び最初のメニューに戻る。
彼は食べ物に関しては死ぬほど優柔不断らしかった。
「美羽決まった?」
「なめこ蕎麦にしようかなぁ」
「あーそうなんだよ!俺もそれと迷ってて…」
「とろろ蕎麦とも迷うけど」
「わかる!とろろもいいよなぁ〜とろろとなめこ……うーん」
写真を眺めながらその二択を交互に目を動かし、
「とろろ蕎麦!」
と言って、メニューを閉じてテーブルに置いた。
これ以上迷わないための、彼の秘策らしい。
その光景を見て思わず笑ってしまった。