僕はキミの心臓になりたい
「そーいえば、まだ退院の話でてないの?」
ー退院。
嬉しいようで、嫌なような響き。
私は真っ白なシーツを握り
一間を置いて答えた。
「うん。でももしかしたら、今日の検査でわかるかもしれない」
そう言うと彼は、嬉しそうに笑った。
「そっか。ならもう少しだな!
じゃあまた明日来るから」
どうして、私なんかのために
毎日ここに来てくれるんだろう。
何であんなに、嬉しそうな表情をしてくれるの……?
そんな疑問を手を振りながら
病室を出て行く彼に投げかけながら、見送っていた。
私とキミは、たったの1ヶ月前まで赤の他人だったのに。
今まで聞こえなかった風の音がして、窓の外を見た。
強い風が、中庭に立つ大きなブナの木の葉を揺らしていた。
深い緑色の葉をつけて立つその木は
強い日差しを浴び、生命力を保っていた。