僕はキミの心臓になりたい
そんな風に言われたのは初めてだった。
大抵の人間は、体が弱いせいで
昔から入院ばかりしていることを話すと
「辛いね。大変だね」
と同情する。
もちろん、入院ばかりは辛い。
学校に行けないせいで勉強について
いけなかったり、友達もできにくい。
極端な運動もできないから
運動会はいつも踊りしか出番はなかった。
思いっきりグランドを走り回るみんなを見ては、
子供ながらに自分の境遇が嫌になった。
けど、実際には嫌なことばかりじゃなくて
入院ばかりの日々でしか味わえない喜びもあった。
例えば、毎日病室まで会いに来て
話し相手になってくれた患者のおじいさんがいた。
同じ病室になった同い年の女の子のお父さんが、
暇つぶしにと私にまで漫画本をくれたこともあった。
私の事を子供の頃から知ってる
おばあさんが、お土産にくれたお菓子を
会うたびに私におすそ分けしてくれた。
子供の頃から入院してると
顔見知りの患者さんや看護婦さんが増えていき、
私が小学6年生の時の授業参観や運動会まで
観に来てくれた人たちもいた。
昔を振り返ると、私がどれほど人に愛されてきたか気付いた。
子供の頃は純粋だったから
「可愛いそうな子」と周りに言われれば
「ああ、私は可愛いそうな子なんだ」
と思い込み、
自分をそんな風にしか見れてなかったのかもしれない。
ー「俺から見た美羽はいろんな人から愛される子に見えるよ」ー
羽賀くんから見る私は
愛されて育った子という風に見てくれたことが嬉しかった。