僕はキミの心臓になりたい
あれだけスマホに来ていたメッセージがもう来ることはない。
それなのに、私は毎日スマホをチェックしていた。
意味ないのにね。
もう二度と来るわけないのに。
わかってても、手が習慣のように覚えてしまってるんだ。
会いたいよ……
会いたいよ羽賀くん……
毎晩、枕に顔を押し付けて泣いていた。
部屋のドアがノックされる。
「美羽、何かあった?」
1週間以上、部屋に閉じこもっていた私をお母さんは心配していた。
私は布団を被り、何も答えなかった。
「入るよ?」
視界が遮られて見えないけど、お母さんがベッドに近づいてきたのがわかった。
「美羽、どうしたの?」
「何にもないよ……」
「そんな事ないでしょ。明らかに前と違うじゃない」
布団を被ったまま、返事はしなかった。
「何かあったんでしょ。話して」
お母さんの優しい言葉に、張り詰めていた糸がほどけていく。
「お母さん……」
ポツリと落ちた涙をぬぐい、私はお母さんに話し始めた。
「私、好きな人がいて……その人とずっと一緒にいたかったのに、もう会うことやめたの……」
「どうしてやめちゃったの?」
「私が病気だから……
この先もずっと彼といれるとは限らないし、
辛い想いする前にもう彼のこと解放させてあげたかったから……」
「そう……」
お母さんに話しながら涙が溢れでた。
「けどね、忘れようとすればする程
好きな気持ちが溢れちゃって
後悔ばかりしてるの。
本当バカみたいなんだけど……」
お母さんは布団を被ったままの、私の頭に手を置いた。
「恋をするってそういうものよ。
相手のことばかり考えて
頭がいっぱいになっちゃうのは
誰だって経験するものなの。
だからバカな事じゃない。
それに、彼のことを想って自分から身を引いたのは
それくらい彼の事を愛してるんでしょ?
彼の事で頭がいっぱいなんでしょ?
それなら無理に忘れなくったっていいじゃない」
子供みたいに泣きじゃくる私の頭を、お母さんは優しく撫でてくれた。