僕はキミの心臓になりたい
「はあ……」
機内で窓の外の景色を眺めながらふいにため息が出た。
それとは一変、隣にいる羽賀くんは
ガイドブックを読みながらはしゃいでいる。
「うわ〜すげー!この花畑全部ラベンダーなんだって。見ろよ、絨毯みたいじゃね?」
「そだね」
「元気ねーなぁ。せっかく美羽が行きたかった摩周湖に行けるんだぞ」
「そうだけど、なんか心がまだついてこないっていうか。
それにこんな軽装で北海道行く人いる?」
飛行機の時間が迫っていることもあり、
身なりの支度だけで、着替えとか
何も持ってきてないのだ。
何故か羽賀くんも。
「いーじゃん、あっちで買えば!
そんな小さいことより、今の時間を楽しもうよ。
せっかくの北海道旅行なんだからさ」
何でも楽しそうに話す羽賀くん。
ずるいなぁ……
その彼一つの笑顔で、不満なんかどーでもよくなっちゃうね。
諦めがついて、私も羽賀くんと一緒に旅行を楽しむことにした。