僕はキミの心臓になりたい
腹ごしらえを終えた後は、いよいよ摩周湖へ車を走らせた。
タクシーの中で、私は窓の外に広がる景色に圧倒された。
空は、雲一つない真っ青。
空を隠すような余計なものは一切なく
山を彩る緑と青色の空が合わさった
景色がとても美しかった。
壮大な大草原の中を、どこまでも続きそうな一本道を進んでいく。
隣にいる羽賀くんも反対側の窓を見つめていて、
表情は見えないけど景色に目を奪われているようだった。
2時間かけて到着し、摩周湖が見える第3展望台へと向かった。
そして、
「これが摩周湖……」
そこには、青とも透明とも見える壮大な湖が広がっていた。
空の色を水面に映したかのような透明度。
あまりの美しさに息を呑んだ。
「すごいね。本当に真っ青だね……」
「うん……」
日本一の透明度の高さがもたらす不思議な色。
その鮮烈な青色は「摩周ブルー」と言われているんだって。
どこも景色が綺麗すぎて、何を撮っても絵になるようだった。
「知ってた?摩周湖って注ぎ込む川も
流れ出る川もないのに水位が変わらないんだって」
隣にいた羽賀くんが摩周湖を眺めながら言った。
「そうなの?不思議……」
「神聖な場所だよな。なんか生きる力が湧いてくる気がする」
羽賀くんの言葉を聞きながら
私は心の中で連れてきてくれた彼に感謝した。
本当に摩周湖に来れるなんて思ってなかったから。
奇跡のようだった。
羽賀くんとなら、どんなに望みが薄くても
奇跡を起こせるんじゃないかと思えてくる。
自分は病気だから、長く生きることは
できないと決めつけて自分の人生を
棒に振ってもいいと思ってた。
でも羽賀くんが私のやりたい事を叶える
ノートを渡してくれてからは
生きる希望が湧いてきて
もっともっといろんな経験をしたいと思い始めた。