僕はキミの心臓になりたい




そんな私に、生きるきっかけをくれた

羽賀くんに聞いてみたいことがあった。



「生きるって何なんだろうね」


「生きる?」


「未来を見ることができないから不安だし

神様は試練しか与えないから辛い事ばかりだし。

それなのに、どうしてみんな生きるのかな?」


「どうした?なんか急にまじめな話だな」



羽賀くんはクスクス笑って私を茶化した後

うーんと腕を組んで考えてくれた。


しばらく彼は摩周湖を眺めながら考えた後、口を開いた。



「確かに辛い事ばかりだよ。

けど、未来を知ったらそれこそ

生きる意味がなくなると思う」



「え?」


「先が見えなくても、夢や希望があれば

それに向かって生きていきたいって思えるだろ。

その日常の中で楽しいこととか

悲しみの経験をしていく。

人と出会って、誰かを好きになる。

そして人を愛する事、愛される事の

気持ちを知っていく。

それが生きるってことなんじゃないかな」




羽賀くんの言葉は、流れるように私の中に入ってきた。


うんうんと頷いていた羽賀くんは急に笑い出した。



「ははは。なんかまじめに語っちゃった!今の全部忘れて」


「何で?すごく素敵だったよ」


「本当に?」


「うん」




羽賀くんの言葉を聞きながら、自分が生きることの意味に気づいた。



私は羽賀くんによって生かされている。


羽賀くんから、いろんなことを教えてもらっている。


その日常の中で、私はキミを好きになった。



見つけ出した本当の想いが湧き上がる。



私はキミと……




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