僕はキミの心臓になりたい
しばらく温泉街を歩き続けると
小さいけど温泉付きの旅館を見つけ
そこに泊まることにした。
「2名様ですね。和室一部屋のご用意でよろしいですか?」
フロントでエプロンを付けた
白髪のおじいさんがニコニコと
2人を交互に見ると羽賀くんが慌てた。
「あの……できれば2部屋用意してくれませんか?」
「申し訳ございません。
その他の部屋は満室になっておりますので
ご用意できるのは1部屋のみとなります」
私は横で羽賀くんとおじいさんのやり取りを観察していた。
まさか同じ部屋に泊まると思ってなかったので、
羽賀くんの「別の宿探します」という言葉を待った。
すると、羽賀くんは私の顔をチラッと見てから
「じゃあ一部屋で大丈夫です!」
……はい?
と、いうわけで2人一緒の部屋に泊まることになった。
「おおー!値段の割にはだいぶ広いしいい部屋だな」
部屋に着くなり、羽賀くんははしゃいでいるが
私はどうしていいかわからず、部屋の入口で棒立ちしていた。
「景色もなかなかいいな〜美羽も見てみ……って、どうした⁉︎大丈夫か?」
自分の顔が硬直していて
緊張が顔に出ていたのが羽賀くんにもわかったらしい。
本当に同じ部屋に泊まるの?
高校生の分際でいいのかな。