僕はキミの心臓になりたい
君の心臓になりたい
そんな生活が3日程過ぎた日だった。
突然吉沢医師に呼ばれ
病院の一室にお母さんと私と吉沢医師が向かい合って座った。
私は虚な目のまま、吉沢医師とお母さんのやり取りを聞いていた。
お母さんが恐る恐る吉沢医師に聞く。
「先生、お話って何でしょうか……?」
「実は今日お呼びしたのは、美羽さんの今後の治療方針についてなんですが……」
吉沢医師は一間あけた。
「ある手術の方法があるんです」
「手術?」
吉沢医師はあらゆるデータ表を見せながら説明した。
吉沢医師がいう手術というのは、日本で数件しか実践されたことのない心臓手術だ。
この手術は過去に一例しか
成功したことのないもので
吉沢医師も経験したことがない。
手術に失敗し、手術中に亡くなってしまう場合もあるのだという。
成功率はほぼ0%に近いものだ。
「この手術をすれば美羽は助かるんですか?」
「かなりリスクが高いもので、必ず助かるという保証はありません。ですが……」
一度肩を落としたお母さんが、再び顔を上げた。
「この手術のことはお話するか迷いました。
でも、美羽さんの心臓は成長するにつれ
やがて機能しなくなります。
長年僕は美羽さんの心臓を治すために診てきたんです。
少しの確率でも助かる方法があるならば
僕はこの手術に挑みたいんです。
ご家族でよく話し合って考えてみて下さい」
吉沢医師は私たちに深々と頭を下げた。
その姿も、今の私の目には映らなかった。