僕はキミの心臓になりたい




瑞稀のお母さんはどこかやつれていて

疲れ切っていた表情をしていた。


けど、目はしっかりと私の方を見ていた。



「美羽ちゃん、そんなこと言ったらダメ。そんなこと言ったら瑞稀が悲しむでしょ?」



私は瑞稀のお母さんが見れず、俯いたままでいた。



「あなたに一番生きてほしいと思っているのは瑞稀なのよ?」



すると、瑞稀のお母さんは私に何かを差し出した。


それは、小さいカードのようなもの。


私はこのカードを知っていた。


震える手でそれを受け取る。



「何だかわかる?」


「ドナーカード……」


「これ、瑞稀のよ」



思わず、瑞稀のお母さんを見上げた。



「お父さんが心臓病で亡くなったのをきっかけにドナーに登録したの。同じ心臓の病気の人のために何か役に立ちたかったのね」



瑞稀の言葉が脳裏に蘇る。



ー「親父はドナーを3年間待ち続けたけど、結局助からなかった。

情けなかったよ……

目の前で親父が苦しんでる姿を何度も見ていたのに、

亡くなるまでの3年間俺は

何もしてやれなかったから。」ー




「ずっと言ってたの。自分の身にもし何かあったら、美羽ちゃんに心臓を移植したいって」




< 181 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop