僕はキミの心臓になりたい
「行こうか。美羽」
先ゆく彼が振り返り、私は立ち上がった。
「うん!」
彼の方へ駆け寄り、行きと同じように階段を下った。
その時、びゅうっと強い風が吹き、私の黒髪が揺れた。
「わっ」
乱れた髪を直しながら、何気なく後ろを振り向く。
「……瑞稀?」
見えた姿は幻かもしれない。
でも、私には確かに見えたの。
階段の頂上に、あの頃のままの瑞稀が制服姿で立っていた。
彼は……やっぱり笑っていた。
一粒の涙が頬をつたう。
いつでもあなたは、こうして見守っててくれるんだね。
再び強い風が吹いたとたん、瑞稀の姿はなくなっていた。
「美羽〜行くぞ!」
下の方で、彼が叫んでいた。
「はーい!」
私は振り返り、彼のもとへ駆け下りていった。
さよなら 瑞稀
でも
忘れないからねーー
END.