僕はキミの心臓になりたい



その反面、俺は何も言葉を発しないほど冷静だった。


自分が冷静でいられたのは

この病気になったことを初めて告げられた時から

助からないかもしれないとある程度

覚悟できていたからかもしれない。



あとは、死を待つのみなのか……


死ぬ事は怖くない。


けど、後悔して死ぬのは怖かった。



「今後は症状を抑える薬の投与と

運動制限に注意していく方針にしたいと思います」


「先生に1つ聞いていいですか?」


「いいよ」


「その治療を続けて僕はあとどれくらい生きれますか?」


「やめて瑞稀!」


おふくろが咄嗟に俺の腕を掴んだ。



「今聞いときたいんだ。あとで後悔したくないから」


俺の覚悟が伝わったのか

おふくろは腕から手を離して黙って俯いた。



そして桜田医師は、一間を置いたあと告げた。


「瑞稀君は……おそらく来年の冬まで生きるのは難しいと思われます」



その瞬間、おふくろの膝に置いていた

ハンドバックが床に落ちた。


カバンからポーチやら財布やらが

無残に床に散らばってゆく。



おふくろは顔を手で覆って、泣き崩れた。



あと1年。


それが俺に残されたわずかな時間。


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