僕はキミの心臓になりたい
死ななきゃいけない運命は変えられない。
それなら後悔を天国に持ち込まないように
今自分ができることを精一杯やればいい。
ペン立てからボールペンを取り出すと
手帳を開き、その表紙に
『死ぬまでにやりたい10のこと』
と、書いた。
15歳の自分には、まだまだやりたいことがたくさんある。
10個に絞らなければ、きっと区切りがないだろう。
あと1年、残された時間に何をしようか
必死になって考えた。
やり残してることならいくらでも思いついた。
高校生になる前に部屋の模様替えを
したかったけど、結局めんどくさくなってそのままだ。
クラスの友達から借りたCDも
返さなきゃいけないのに
入院しなきゃいけなくなって返せてないままだ。
友達と何回も「いつか行こうな」って
話してた好きなバンドのライブも行けてないままだ。
もっと時間があれば……
考えてるうちに心が焦り出してきた時、はっと気づいた。
時間はたくさんあったはずだ。
今まで生きてきた15年という時間が。
もっと有意義に使っていれば
こんな焦る必要はなかったはずだ。
「時間が戻ればなぁ……」
今更ながら、後悔が押し寄せる。
けれど、今の自分には落ち込んでる暇なんてない。
今自分は一番何がしたいのか。
目をつぶって考える。
ふと、まぶたに浮かんだのは
1年前に出会ったあの子の笑顔だった。
忘れもしない、運命の出会い。
そうか。
俺にはまだ生きる源があるんだ。
俺は……
あの子のために行きたい。
あの子の姿が浮かんだ瞬間
俺のペンは書き進んだ。