僕はキミの心臓になりたい
誰かが庇ってくれたのなんて初めてだ。
内川さんたちは悔しそうな表情をして
教室から出て行った。
1時間目は移動教室。
必要な教材を持って廊下を歩いていると
少し前にさっき教室で庇ってくれた
彼女が歩いていた。
私はさっきのお礼がしたくて
彼女に駆け寄った。
「あっあの…さっきはありがとう」
彼女は突然声かけられてびっくりしたようで
唖然と私を見つめていた。
けれど、すぐに私の言葉の意味が
わかったようだ。
「いいの、そんなこと」
ふふっと笑った後、彼女は続けた。
「相楽さんがやっと学校に
来れるようになったのに
みんなからあんな酷いこと
言われたら嫌だろうなって思ったから」
そんなこと考えてくれる子が
同じクラスにいたんだな……
いい子だなと思っていると、彼女が続けた。
「みんなが言ってることはただの嫉妬!
相楽さんと羽賀が仲良いのが
羨ましいだけだから
気にしないのが一番だよ」
ニコッと笑いかけた彼女の笑顔に
思わず見惚れそうになった。
この子、本当に可愛いな……
サラサラなびく栗色のストレート髪に
長いまつげ。
身長は私よりも小柄で
誰もが見惚れてしまうような優しい笑顔。
クラスの男子がこの子の話を
しているのを聞いたことがあった。
まるで、クラスのマドンナ的な存在の子。