[完] 空に希望を乗せて [長編]

夏季大会in個人戦

翌日。個人戦。
今日こそはみんなに進んでもらいたい。どうなるんだろう。今日で引退だなんて…そんなことにはなって欲しくない。開会式も終わり、ついに先輩たちが呼ばれる。今日の見どころは、もちろん全員だ。初戦敗退なんて思い、して欲しくない。
「コールします。女子シングルス、試合番号2番石橋高校の佐田心結希さんと、弓場高校青柳留奈さんの試合を第3コートで行います。選手は審判用紙をとりにきてください。」
留奈先輩のカチコチに固まった緊張した顔を私はわすれられないだろう。
「先輩頑張って下さい!」
「留奈、精一杯やってきてよ!勝ってね!」
「うん…。絶対勝ちをここにとってくるよ!」
先輩が下りて行く。
「よし、3コートにいくよ!」
カナ先輩の声。
「留奈先輩頑張って下さい!」
「ファイトです!」
「留奈頑張れ!!」
サーティーンシックスティーン。先輩、勝ってる。でも3セットマッチ。あと1セット取らなきゃならない。
1セット取ったが、1セット取られた。どっちも引退がかかってる。
「先輩!!ファイトです!!」
「せんぱーい!」
「留奈ぁ!」

11点での休憩。留奈先輩、今にも倒れそうだ。先輩…。試合続行。
「勝てるよ!!」
「大丈夫、留奈は精一杯やってきたじゃん! 」
「勝てる!頑張れ留奈!」
弱々しい笑顔を浮かべ、応援席の方を向く。
「先輩!ファイトです!」
私は声の限り、思い切り叫んだ。

結果は勝利。勝った瞬間、先輩はしゃがみ込んだ。
上がってきて、先輩は泣いた。嬉し泣きってやつ。昨日の泣き方より今日の泣き方の方がずっといいと思った。
その後、結果的には誰も次の大会に出場することは出来なかった。
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