【医、命、遺、維、居】場所
「柚希の気持ちは分かるよ。・・・この間ね、勇(イサミ)ママに会いに行ったんだ。」





「勇ママに?元気だった?私も会いたかったな。」







勇ママは施設長であり、肝っ玉母さんのような太陽みたいな人なので、親しみを込めてママ付けで呼んでいる。






両親がいなくても頑張れって励ますでもなく、両親がいないから大変って同情する訳でもなく。


ただ一緒に遊んで、一緒に勉強して、一緒にいて見守ってくれる。





勇ママは子供が欲しくて欲しくて堪らなかったのに授からなくて、知り合いから紹介してもらって施設で働くようになった。



だから施設で働けることは天職だって、私が授業で参加したボランティアをもっとしてみたいと相談した時に言っていたっけ。







・・・・じゃなくて!






「なんでいきなり勇ママ?」







話の方向性が見えなくなった。






「話がしたくて。柚希と巧と杏梨ちゃんのこと、それから僕自身のこととかね。勇ママが一番ハッキリ言ってくれるから。」






真っ直ぐな愛情を注いで貰っているけれど、真っ直ぐ過ぎて思春期真っ盛りの時期は口喧嘩が絶えないのも事実。



かく言う私も、勇ママに勝てた試しがない。






「そっか。それ、私が聞いてもいいやつ?」





「もちろん。まあ、結論としては全部一言で終わったけどね。」




「一言?」






「迷惑かけてくれないと寂しい。」







「ふっ、あはははっ!勇ママらしいね。」







わざとらしく口を尖らせて盛大に寂しがる姿が、目に浮かんでしまった。








「それと、柚希があんまり連絡くれないって拗ねてたよ。僕はセンターで毎日会えるのにって。」




「その理由で拗ねられても・・」









日本にいなかった間よりは連絡してると思うんだけどな。









「僕も言った。最終的には、頭では分かっていても、本当のことだし口から出てしまうから仕方ないって開き直ってた。」







それも勇ママらしい。
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