【医、命、遺、維、居】場所
「でも、それは遅刻の理由として許容できないなぁ。」






醸し出すほんわかさに定評のある絢前遥(アヤサキ ハルカ)先生も、上長としての立場上厳しくなっちゃうのは当然よね。



あからさまな嘘をつくよりは良いんだけど、問題点はそこじゃないんだよ、麦傍先生。






「そんなぁ~」






「単なる言い訳だろ。許容できるできないが論点じゃない。」




「言い訳じゃありませんー!事実ですぅー!」







泣きべそをかいたり、むくれたり、麦傍先生は忙しい。




けど麦傍先生、樫岡巧(カシオカ タクミ)先生の言っていることは間違っていないからね。







「事実なのは遅刻の方だろ。」




「まあまあ巧、麦傍先生をいじめるのはそれくらいにしてあげて。」






2人は大学時代からの付き合いだけど、麦傍先生に対する態度は正反対すぎる。








「あまり甘やかすとろくなことにならないぞ、遥。」






巧は菓子パン片手に休憩室へと引っ込んでいった。


この誰に対しても仏頂面でつっけんどんな態度の理由を知る身としては複雑な心境なんだけど、不器用にすら笑えないなら別に笑顔を振りまく必要はないかなと思う。




産婦人科医としての技術は申し分ないし。



それに。






「(本当は優しいの分かっているし。)」







分かっているからこそ、こうやって楽しく聞き役に徹せれるんだし、ね。






「そういえば、傅雖先生。その手のもの、私でよければ貰いますよ。」




「あ・・・!ありがとうございます。お願いします。」





忘れかけ・・・いや、完全に忘れていた目的を、お言葉に甘えて駒枝さんへと渡し完了した。
< 3 / 43 >

この作品をシェア

pagetop