【医、命、遺、維、居】場所
院長室を出ると巧が口を開く。





「いいのか?親父の代わりなら俺が」




「いいよ、困った時はなんとやらでしょ。というか、巧はヘルプ要員じゃないと思うよ。よく分からないけど、院長に連絡くるぐらいだし、お父さんの体調あまりよくないんじゃない?」




「分からん。あの人は仕事一筋だからな。俺が言ってもきかないし。まあ、約曲院長と話してみるよ。・・・そういえば、俺に何か話があるんじゃなかったか?」






変なタイミングで思い出さないでほしい。






「あーいいよ、またで。今は引き継ぎが最優先だから。」





「そうか?なら、いいけど。」






若干納得いかないような顔だけど、急を要することじゃない。

時間がかかってしまいそうだし、巧のお父さんのことが落ち着いてからでも問題ないし。





何より巧の役に立てることが嬉しい。






「さて、引き継ぎを・・・あ。」




「どうした?」





引き継ぎプランを考えて、と思う前に浮かんだ疑問。







「病院の近くってホテルとかある?宿泊所聞いてない。」




「いや、あの辺にはないな。民宿とか夏なら海の家とかあるけど、今は閑散期だからな。」





「そっかー。仕方ない仮眠室貸してもらうか。」






一週間程度なら占領しても問題ないだろうしね。







「・・・うちに泊まるか?」



「え?」




遥ならあり得るんだけど、巧の口から出るとは思わなくて。






「お父さんいるよね?」





「部屋ならあるし、来客用の布団もある。親父は・・問題ない。」





微妙な間があったけど。






「本当に?」





「ああ。」






「ありがと。じゃ泊まらせてもらうね。」




「ああ。」





やけに頑なに勧めてくれたけど、そんなに辺鄙な場所なのかな?



まっいいか。
巧が育った場所ならホテルより安らげそうだし。





そんなことを思いながら、改めて引き継ぎプランを考えた。
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