【医、命、遺、維、居】場所
「もういい、勝手にしろ!」







吐き捨てるようなセリフが聞こえたかと思えば、玄関の扉が閉まる音。



巧は家から出ていってしまったようで、居間を覗くと弦沓さんの背中が見えた。






なんだか寂しそうで。







「(この感じ・・・)」







杏梨を引き取って欲しいと言いに来た、叔父さんの背中に似ている気がして。


遥の顔が浮かんだ。






「(私にも出来る?遥が私に話してくれたみたいに巧に出来る?)」




「すみません、お恥ずかしいところを。」




「あ、いえ・・・」






弦沓さんが入り口に立っている私に気付いたようで、気まずそうに頬をかく。







「分かっているんです、せがれが心配してくれているのは。でも、患者を放ってはおけない。・・おれの代わりに来てくださっているのに申し訳ない。」




「そんなことはありません。代わりに来ているのは確かですけど、決して弦沓さんのせいでは。・・・巧さん、迎えに行ってきますね。」







海岸にいるだろうと弦沓さんにお願いもされて、巧を迎えに出掛ける。
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