甘い恋愛を、君と。



夢か現実かも分からない、ぼんやりとした意識の中で、相澤の、わたしを呼ぶ聞こえた。

少し低くて、優しく心に響く声。その声を聞くと、なぜか泣きそうになった。


「…あいざわ、」
「なんだ酔っ払い」
「相澤、ごめん………」
「………」
「…………」
「おまえ、寝たのか」
「……………」


このぼんやりとした意識の中でも、わたしは相澤のことを考えていて、わたしは相澤に対して謝っていた。

自分でも笑えるくらい、相澤のことしか頭にないものだ。そんなことを考えていた。


ふと、真っ暗な視界の中で、ぼんやりとする頭の中で、右頬を優しく撫でられたような気がした。

それは壊れ物を触るかのように、優しい手つきだった。


ちょうど目元のおしぼりが少しだけずれて、視界が少しだけひらける。

唐突に明るくなった視界に目が慣れない中で、どんどん近づいてくる相澤の綺麗な顔が見える。

この状況がどういうことか分からないまま、気がつくとその距離は、お互いの息遣いが聞こえるほどまで近づいていた。


そして、相澤の柔らかい唇が、わたしの唇に重なった、気がした。


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