甘い恋愛を、君と。
ああ本当に、なんて、最悪な日なんだろう。
満員電車から降りて、駅の改札をくぐりながらそんなことを考える。
若いころは楽しかった。高校生まで、わたしは優等生だった。小学校では自分が描いた絵で県大会に行ったし、中学生の時は成績もリオとツートップで。
その頃は、今のリオのような、一流企業に勤める綺麗なキャリアウーマンになると疑わなかった。
歯車が狂い始めたのは、大学入試に失敗してからだ。入りたかった有名私大に落ちて、三流大に入学した。
そして就職活動もうまくいかず、なんの取り柄もない、ごくありふれたOLになって、今に至る。
きっとこのまま、ごくありふれたつまらない人生を過ごすのだ。ずいぶん落ちぶれたな。はは。
そう考えていたとき、足元を見ていなかったせいで、盛大にすっころんだ。幸い人通りは少なく、人に見られることはなかったけれど、わたしのメンタルゲージは、完全に底をつきてしまった。
「…もう、こんな人生いやだ。楽しかったあの頃に戻りたい」
そう、ぽつりとつぶやいた。膝は擦れて血が出ているのか、ジクジクと痛む。今すぐ大声で泣きだしたい。そう考えながら重い身体を起こそうとしたときだった。
「大丈夫ですか?手、掴まってください」
「え、あ、ありがと、ございます」
薄い茶色の髪の、綺麗な顔をした男の子に手を差し出された。人通りが少ないとはいえ、見られてたのか。しかもこんなにイケメンの男の子に。恥ずかしすぎるがお言葉に甘えて手を掴もうとすると、その子は突然しゃがんで、わたしの顔を覗き込んできた。