甘い恋愛を、君と。
劣等感
昨日は寝坊してさんざんだったため、今日はいつもより早めに起床して出勤すると、同期の丸井ちゃんも既に出勤していた。丸井ちゃんはわたしの存在を確認するや否や、わたしの元へものすごい勢いで走ってきた。
「縁、聞いてよ~」
「おうおう丸井ちゃんどした」
「彼氏と別れた」
「え、うそ。あんなに仲良かったのに」
「あっさりふられた。慰めて」
「よしよし。今度呑みいこ?話聞くよ」
「えん~~~」
そう言ってわたしに抱きつく丸井ちゃんの目は、よく見たら腫れていて、ふいに泣きそうになる。よし、奢って思い切り甘やかしてあげよう、と心の中で意気込んでいると、丸井ちゃんは上司に愚痴を聞いてもらうべくわたしのもとを離れていった。
そんな丸井ちゃんとすれ違うようにして、同じく同期の相澤がわたしの元にやってきた。
「おはよ、天野。丸井、彼氏と別れたんだって?」
「相澤、おはよー。うん、聞こえてた?」
「丸井声でかいからなー。…びっくりだよな」
「うん。結婚すると思ってた」
「男女の付き合いって難しいよな。てか昨日、飲み行けなくて悪かったな」
「あーいいよ。急に誘ったわたしが悪かったし」
「お詫びもかねて、今週の土曜日の夜どう?奢るよ」
「あー、ごめん。土曜日は先約あるんだよね」
「それ、もしや男ですか?」
そう言うと、いつのまにかそばにいた丸井ちゃんがげっそりとした顔で唐突に会話に入ってきた。