君のいた時を愛して~ I Love You ~
見覚えのない天井に、サチは自分がどこにいるのかわからず、起き上がってあたりを見回した。
(・・・・・・・・ここ、どこ? 病院?・・・・・・・・)
腕に刺された点滴の針からつながるチューブとパックを認識したサチは、自分が病院にいるのだと察した。
(・・・・・・・・でも、佐伯先生のところじゃない・・・・・・・・)
サチはあたりの様子をうかがいながら考えた。
そこへ、扉を開けてコータが入ってきた。
「サチ!」
起き上がっているサチを見たコータは、名前を呼びながらサチのもとに走り寄った。
「よかった、サチ。もう、目が覚めないんじゃないかって・・・・・・」
コータはサチを抱きしめると、涙を流しながら言った。
「コータ、心配かけてごめんなさい」
サチは謝ると、コータを抱きしめ返した。
「もう、帰っていいんでしょ?」
サチは言うと、自分の洋服を探した。
「サチ、今日は、入院して検査をすることになったんだ」
コータの言葉に、サチは激しく頭を横に振った。
「いや、絶対にいや。コータと離れ離れになるなんて、絶対にいや!」
「落ち着いて、サチ」
コータは必死にサチをなだめようとしたが、サチは今にも点滴の針を引き抜きそうになった。
「サチ、俺のために、ちゃんと検査を受けてほしいんだ!」
病院の中だということも忘れて、コータは大きな声で言った。
「コータの・・・・・・ために?」
サチは動きを止めるとコータのことを見つめた。
「ずっと、サチの顔色が悪いのや、疲れた顔をしているのが心配だったんだ。病院に行ったほうが良いって言ったのだって、サチのことが心配だったからなんだ」
コータの言葉にやっとサチが耳を貸した。
「お願いだから、ちゃんと検査を受けて、必要なら治療をして、俺のために元気になってくれよサチ。お願いだから、俺を一人で置いていかないでくれよ・・・・・・。サチだけが、俺の家族なんだ」
コータの言葉に、サチはコータのことをしっかりと抱きしめた。
生きてはいるが、絶縁状態のコータの父。同じく生きてはいるが、刑務所の中にいるサチの母。コータもサチも、どちらにも本当の意味で家族といえるのはお互いだけだった。サチの父もコータの母も、既にこの世にいない。
「家から、検査に来たんじゃだめなの?」
サチは心細そうに問いかけた。
「サチ、佐伯先生のところで倒れて、ずっと目が覚めなかったの覚えてる?」
コータの言葉に、サチは遠い昔のような感覚を覚えながら、今日、大将の店の仕事の後に病院に検査の結果を聞きに行ったことを思い出した。
「そうだね。精密検査が必要だって言われて、気が遠くなって・・・・・・」
「そう。そのあと、ずっと意識が戻らなかった。先生から電話を貰って、俺が駆け付けた時も目覚めなかった。俺、本当に心配したんだ。そうしたら、先生が紹介状を書いてくれて、そのまま救急車で運んでもらったんだよ。だから、今晩一晩、様子を見て明日精密検査して、午後には退院できると思うから・・・・・・」
やっと涙を堪えたコータだったが、その顔は今にも泣きだしそうに見え、サチは嫌だとは言えなかった。
「わかった。明日の午後までね」
サチは言うと、コータの胸に顔をうずめた。
見知らぬ場所で、一人で夜を明かすことを考えると、怖くてたまらなかったけれど、それでコータが安心してくれると思えば、我慢することができた。
「サチ、明日は朝一番で会いに来るから、心配しなくていいよ。それから、これ、サチのPHS。服のポケットに入っていたから、渡しておくよ。寂しかったら、いつでもメッセージ送ってくれれば、俺がすぐに答えるから」
PHSを渡してコータが言うと、サチはPHSをぎゅっと握りしめて頷いた。
「わかった。コータの言うとおりにする」
サチの言葉に、コータは安心した表情を浮かべた。
二人が見つめあっていると、扉が再び開き、白衣を着た男性が入ってきた。
「中村さん、やっと目が覚めましたか?」
「先生、すいません、目が覚めたらお知らせするんでしたよね」
コータはサチから体を離すと、申し訳なさそうに言った。
「今晩の入院、大丈夫そうですか?」
「はい、一晩だけってことで」
「わかりました」
医師は言うと、サチに歩み寄った。
「医師の中嶋です。通常は、外来を見ているのですが、検査入院なので、私が入院中といっても、明日の午後までですが、よろしくおねがいします」
中嶋医師が言うと、サチは少し恥ずかしそうに『よろしくおねがいします』といった。
「先生、サチのこと、よろしくお願いします」
コータも深々と頭を下げた。
「もうすぐ面会時間も終わりですが、明日は検査でバタバタすると思いますから、お昼ごろにはいらしてください」
「あの、朝から来ても大丈夫ですか?」
コータの問いに、医師は『かまいませんよ』と答えると、笑顔を見せた。
「では、失礼します」
中嶋医師は言うと、サチの病室から出て行った。
「きっと、全部聞こえてたんだよね」
サチは恥ずかしそうに言った。
「多分、俺とサチが超ラブラブだって思ってるよ」
コータは笑顔で言った。
「でも、あの部屋に一人で帰るのは寂しいなぁ。いつも、サチが待っていてくれたから」
コータはサチに出会う前を思い出しながら言った。
「一晩だけだもん、コータも我慢してね」
サチの言葉に、コータは頷いた。
面会時間の終わりを告げるアナウンスが流れ、コータは身の回りの物を整えた。
「サチ、じゃあ、俺は帰るから・・・・・・」
「うん、わかった」
コータはサチの唇にキスを落とし、荷物をもって病室から出て行った。
残されたサチは、夜勤の担当という看護師の自己紹介を受け、再びベッドに横になった。
(・・・・・・・・ここ、どこ? 病院?・・・・・・・・)
腕に刺された点滴の針からつながるチューブとパックを認識したサチは、自分が病院にいるのだと察した。
(・・・・・・・・でも、佐伯先生のところじゃない・・・・・・・・)
サチはあたりの様子をうかがいながら考えた。
そこへ、扉を開けてコータが入ってきた。
「サチ!」
起き上がっているサチを見たコータは、名前を呼びながらサチのもとに走り寄った。
「よかった、サチ。もう、目が覚めないんじゃないかって・・・・・・」
コータはサチを抱きしめると、涙を流しながら言った。
「コータ、心配かけてごめんなさい」
サチは謝ると、コータを抱きしめ返した。
「もう、帰っていいんでしょ?」
サチは言うと、自分の洋服を探した。
「サチ、今日は、入院して検査をすることになったんだ」
コータの言葉に、サチは激しく頭を横に振った。
「いや、絶対にいや。コータと離れ離れになるなんて、絶対にいや!」
「落ち着いて、サチ」
コータは必死にサチをなだめようとしたが、サチは今にも点滴の針を引き抜きそうになった。
「サチ、俺のために、ちゃんと検査を受けてほしいんだ!」
病院の中だということも忘れて、コータは大きな声で言った。
「コータの・・・・・・ために?」
サチは動きを止めるとコータのことを見つめた。
「ずっと、サチの顔色が悪いのや、疲れた顔をしているのが心配だったんだ。病院に行ったほうが良いって言ったのだって、サチのことが心配だったからなんだ」
コータの言葉にやっとサチが耳を貸した。
「お願いだから、ちゃんと検査を受けて、必要なら治療をして、俺のために元気になってくれよサチ。お願いだから、俺を一人で置いていかないでくれよ・・・・・・。サチだけが、俺の家族なんだ」
コータの言葉に、サチはコータのことをしっかりと抱きしめた。
生きてはいるが、絶縁状態のコータの父。同じく生きてはいるが、刑務所の中にいるサチの母。コータもサチも、どちらにも本当の意味で家族といえるのはお互いだけだった。サチの父もコータの母も、既にこの世にいない。
「家から、検査に来たんじゃだめなの?」
サチは心細そうに問いかけた。
「サチ、佐伯先生のところで倒れて、ずっと目が覚めなかったの覚えてる?」
コータの言葉に、サチは遠い昔のような感覚を覚えながら、今日、大将の店の仕事の後に病院に検査の結果を聞きに行ったことを思い出した。
「そうだね。精密検査が必要だって言われて、気が遠くなって・・・・・・」
「そう。そのあと、ずっと意識が戻らなかった。先生から電話を貰って、俺が駆け付けた時も目覚めなかった。俺、本当に心配したんだ。そうしたら、先生が紹介状を書いてくれて、そのまま救急車で運んでもらったんだよ。だから、今晩一晩、様子を見て明日精密検査して、午後には退院できると思うから・・・・・・」
やっと涙を堪えたコータだったが、その顔は今にも泣きだしそうに見え、サチは嫌だとは言えなかった。
「わかった。明日の午後までね」
サチは言うと、コータの胸に顔をうずめた。
見知らぬ場所で、一人で夜を明かすことを考えると、怖くてたまらなかったけれど、それでコータが安心してくれると思えば、我慢することができた。
「サチ、明日は朝一番で会いに来るから、心配しなくていいよ。それから、これ、サチのPHS。服のポケットに入っていたから、渡しておくよ。寂しかったら、いつでもメッセージ送ってくれれば、俺がすぐに答えるから」
PHSを渡してコータが言うと、サチはPHSをぎゅっと握りしめて頷いた。
「わかった。コータの言うとおりにする」
サチの言葉に、コータは安心した表情を浮かべた。
二人が見つめあっていると、扉が再び開き、白衣を着た男性が入ってきた。
「中村さん、やっと目が覚めましたか?」
「先生、すいません、目が覚めたらお知らせするんでしたよね」
コータはサチから体を離すと、申し訳なさそうに言った。
「今晩の入院、大丈夫そうですか?」
「はい、一晩だけってことで」
「わかりました」
医師は言うと、サチに歩み寄った。
「医師の中嶋です。通常は、外来を見ているのですが、検査入院なので、私が入院中といっても、明日の午後までですが、よろしくおねがいします」
中嶋医師が言うと、サチは少し恥ずかしそうに『よろしくおねがいします』といった。
「先生、サチのこと、よろしくお願いします」
コータも深々と頭を下げた。
「もうすぐ面会時間も終わりですが、明日は検査でバタバタすると思いますから、お昼ごろにはいらしてください」
「あの、朝から来ても大丈夫ですか?」
コータの問いに、医師は『かまいませんよ』と答えると、笑顔を見せた。
「では、失礼します」
中嶋医師は言うと、サチの病室から出て行った。
「きっと、全部聞こえてたんだよね」
サチは恥ずかしそうに言った。
「多分、俺とサチが超ラブラブだって思ってるよ」
コータは笑顔で言った。
「でも、あの部屋に一人で帰るのは寂しいなぁ。いつも、サチが待っていてくれたから」
コータはサチに出会う前を思い出しながら言った。
「一晩だけだもん、コータも我慢してね」
サチの言葉に、コータは頷いた。
面会時間の終わりを告げるアナウンスが流れ、コータは身の回りの物を整えた。
「サチ、じゃあ、俺は帰るから・・・・・・」
「うん、わかった」
コータはサチの唇にキスを落とし、荷物をもって病室から出て行った。
残されたサチは、夜勤の担当という看護師の自己紹介を受け、再びベッドに横になった。